第2回「解雇トラブルは会社を揺るがしかねません」
日本では労働者の権利が厚く守られています。従業員を解雇する場面では、特にそのことを強く意識して注意深い対応を取らなければ、会社自体が揺らいでしまうことになりかねません。
というのは、解雇無効の争いなどが起これば会社が多大なコスト(労力・時間・損害賠償・弁護士費用等)を負担しなければなりませんし、また、会社に残る社員にも、「冷たい会社だな」「酷い仕打ちだな」という悪印象を与え、会社全体の士気を下げてしまいかねないからです。
解雇予告手当として給与1か月分を支払さえすれば、簡単に辞めさせられるというのは大きな誤りなのです。
労働契約法の16条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」との定めがあります。
つまり、解雇予告手当を支払おうが、解雇の理由や状況が正当でなければ、解雇は無効となってしまいます。
解雇が無効ということは、解雇を言い渡した後も実際には給与支払義務が続いているということであり、後で多額の支払を請求されかねません。
ちょっとしたミスで辞めさせるとか、人員削減で辞めてもらうにしても対象者の選び方がおかしいとか、ましてや経営者と反りが合わないから辞めてもらうなどの理由では、解雇が無効となるおそれが強いでしょう。
また、従業員が問題を起こした場合の懲戒解雇についても、どのような違反行為が懲戒解雇の対象になるのかを就業行為に具体的に記載していなければ懲戒解雇することはできません。
さて、解雇に不満を抱く社員はどのような対応を取るでしょうか。弁護士や労働基準監督署に相談するというケースの他に、労働組合に相談するというケースも少なくありません。
労働組合がない会社の場合、個人で加入できる労働組合(ユニオン)に相談することになるでしょう。
相談を受けた労働組合は、解雇に問題があると考えたら、会社に対して団体交渉を要求してくることになります。
先日ご相談を受けたケースとして、突然、労働組合から、従業員の解雇が不当解雇に当たるから団体交渉を要求する、○月○日○時に事務所に来て下さい、という団体交渉の要求状が送られてきたというお話しがありました。
もし呼出に応じたら大勢の組合員の方に囲まれて協議しなければならないのだろうかと非常に不安がっておられました。
会社は、労働組合からの団体交渉要求には誠実に応じなければならない義務を負っていますが、それは要求のとおりの日時と場所で交渉をしなければならないという意味ではありません。
上のケースでは、私がご依頼を受けて、弁護士が内容を検討するからということで期日を延期してもらった上で、外部の貸し会議室で交渉を行うように調整しました。
そうすることで、雰囲気に飲まれてしまうということを防ぐことができます。
このケースは、従業員の方に重大な違反行為があり、社労士の方が作成されたきちんとした就業規則に基づいて適切に懲戒解雇を行っていた事案だったので、最終的には何らの支払もすることなく交渉を終えることができました。
もちろん、どのような場合でも一切支払わなくて良いということではなく、雰囲気に飲まれて過大な要求に応じたりする必要は無いということであり、事案によっては金銭支払等による解決に応じなければならないことになります。
しかし、適切な対応をとることで、会社を揺るがすようなダメージを受けることは避けることができます。
大事なのは、就業規則などの書類をきちんと整備しておくこと、従業員を解雇する際には最大限の注意を払うこと、トラブルが起こったら早急に対応することです。
トラブルが起こってから弁護士を探すのでは手遅れになりかねませんので、普段から、顧問弁護士など、弁護士と付き合っていくことが大切です。
--------------------------------------------
法律問題のご相談は熊本市中央区「銀河法律事務所」まで。弁護士の河口大輔(熊本県弁護士会所属)が丁寧に対応致します。
住 所 熊本市中央区1-5 リバーサイドルミカ1F
TEL 096-342-1030
お気軽にお問い合わせ下さい。
熊本の弁護士事務所「銀河法律事務所」(熊本市子飼本町)は、一般の方の事件(一般民事、家事事件、損害賠償、債務整理)、企業法務全般(事業承継、取引紛争処理・労務管理、事業再生・倒産整理、顧問弁護士)など法律案件全般を取り扱う法律事務所ですキャッシングやクレジットなどの債務整理(借金・ローン)のお悩みや契約上の問題など懇切丁寧に対応いたします。こんなことでも弁護士に相談していいの?ということでもお気軽にご相談ください。熊本の弁護士事務所「銀河法律事務所」まで。