第11回「スムーズに事業を承継するために」
企業経営者の方が頭を悩ませておられる問題の一つが事業承継、すなわち会社を後継者に譲り渡すことでしょう。
後継者となる子どもさんがおられる場合はその方にスムーズに事業を承継する方策を検討することになります。子どもさんが事業を継がれない場合、他の親族の方に承継したり、あるいは幹部社員の方に承継するという方法もありますが、場合によっては会社を売却することも考えられます。債務が少なく、競争力の高い事業を保有しておられる場合は会社の売却も視野に入れるべきでしょう。
さて、子どもさんのお一人が事業を承継される場合でも、子どもさんが複数おられる場合、相続との関係で問題が生じます。つまり、会社の株式が、子どもさん方に分散されて相続されてしまいかねないということです。
中小企業において会社を承継するというのは、経営者が所有していた株式を譲受けることを意味しますから、いかに後継者に株式を集中させるかということがメインになります。
そのための対策の一つが「遺言」です。遺言書を作成しておくことにより、後継者となる方に株式を相続させる旨の遺言書を作成しておけば、その方が株式を集中して相続し、経営権を掌握することになります。
遺言がなければ、法定相続人(兄弟)間での遺産争いになり、株式が分散してしまったり、株式を得る代償が必要になる恐れもあります。
ただし、遺言があったとしても、最低限の取り分である「遺留分」を主張され、やはり株式の一部が分散してしまうことも考えられます。
また、株式をあらかじめ後継者に生前贈与したとしても、やはり他の相続人が遺留分を主張することが考えられます。また、遺留分の金額を算定するには、生前贈与した場合でも、相続時の価値をもとにして算定するので、贈与後に株式が値上がりした場合には、遺留分額が想定より大きくなってしまいます。そうすると、贈与を受けた方が株式をそのまま持ち続けて経営を承継するためには、多額の金銭で清算しなければならないことになってしまいます。
このような事態を避けて事業承継を円滑に完了するために、平成20年に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)という法律が施行されました。
この法律により、次のようなことができるようになりました。
①生前贈与した株式等を遺留分の対象から除外する合意
②生前贈与した株式等の評価額をあらかじめ固定する合意
上記の内容について、内容推定相続人全員の合意を書面で行い、次にこの合意について経済産業大臣の確認を受ける必要があります。その上で、経済産業大臣の確認を受けてから1か月以内に家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
以上の手続で、上記のように、生前贈与株式を遺留分から除外し、株式の分散を防ぐことができるという内容です。
また、この法律にはさらに、贈与を受けた株式について、贈与税の納税猶予の制度など、事業承継を円滑にする制度が設けられています。
いずれにしても、事業承継は、長期的視野に立って進めて行く必要があります。事業承継を考える時期にさしかかられた経営者の方は、ぜひ弁護士にご相談頂きたいと思います。
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