裁判員制度 いよいよ開始
Posted : 2008年12月10日 11:46
| Author : 銀河法律事務所
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久しぶりにブログを書きます・・なかなかネタがないものですね。
しかし大きなネタができました。
それはいよいよ開始の裁判員制度。
来年の候補者向けに通知が発送されたとマスコミで大きく報道されましたね。
私の知人にも一人通知が送られてきた人がいます。
最高裁から書面がきた!と,とても驚いた様子で連絡してきました。
書面を見せてもらったのですが,辞退できる理由が非常に限定しており,しかも曖昧な印象でした。
やりたくない人も相当いるだろうになあ(その知人は絶対に嫌だと言っていました)。
日弁連・熊本県弁護士会としては裁判員制度推進を掲げている以上,なかなか反対するのは難しいのですが,私が弁護士でなく一般の会社員だとして,この通知を受けたら,非常に苦痛だと思います。裁判員の呼出を無視すれば最高で10万円の過料の処分を受けることがあるようですが,10万円払ってでもやりたくないという人は多いでしょうね(なお,「過料」とは行政上のペナルティであって,刑事罰ではないので,前科・前歴にはなりません。もちろん払わなくても逮捕されることもありません。払わない場合に強制執行を受けることはあり得ます)。
もちろん裁判員制度のメリットはあると思いますが,国民の多数が反対している(ようです)制度をごり押しするだけのメリットがあるのか,正直言って疑問です。
裁判員制度の問題点がいろいろと指摘されていますが,その一つに,裁判の行きすぎた迅速化を指摘することができると思います。
これまで,重罪に問われる事件で,しかも否認しているような場合,長期間の審理が行なわれていました。確かに,裁判が長期化すること自体が被告人にとって負担ではあるのですが,死刑を含む重罪を受ける可能性がある事件で,しかも冤罪の可能性がある場合など,いくら慎重に審理してもしすぎることはありません。そこで,弁護人も,検察官の提示する証拠を精査して,弁護側の証拠も大量に提出し,また,裁判の過程で初めて明らかになった事実も念入りに検討して,被告人の主張を論理的な説得として構築し,それを証拠で裏付ける作業を行なってきたのでした。
しかし,裁判員は一般の方ですので,何ヶ月も,あるいは何年も裁判への参加を強制するわけにはいきません。
そこで,裁判の前に,公判前整理手続という事前検討の場を設け,そこで主張と証拠を絞り込んで,短期間に本裁判を行なうという方式を取り入れることにしました。
この公判前整理手続は,裁判員制度への慣らし運転として,重大事件においては既に採用されています。
公判前整理手続によって,確かに裁判の短縮化は図られました。
しかし,どうしても証拠を過剰に絞り込みすぎ,丁寧な審理ができなくなります。
また,審理途中で新たに明らかになった事情を反映させることが非常に難しくなります。
その結果,杜撰な裁判になりかねないのです。
昨日(12月9日),広島高裁は,ペルー人の被告人が小学生を殺害した事件について一審で下された無期懲役の判決を破棄しました。
その理由は,事実関係(犯行場所)の特定が曖昧だというものでしたが,一審の審理が不十分だったのは,公判前整理手続で証拠を限定しすぎたことが大きかったようです。
今回は高裁が判決に疑問を抱き,一審判決を破棄して地裁に差戻し,地裁でもう一度よく審理をするように命じましたが,高裁が必ずこのような判決を行なうとは言えません。
特に,11月11日に最高裁は,控訴審は裁判員によって裁かれた一審判決を尊重すべきであるという報告書を出しており,高裁の裁判官が一審の判決に疑問を抱いてもひっくり返すことが難しくなっています。
本来,憲法と法律にしか拘束されないことが憲法上保障されている裁判官を,ここまで拘束してまで裁判員制度を導入しなければならないのかと,正直言って疑問です。
もちろん,導入される以上は,そのメリットを最大限活かすように弁護技術を磨かねばならないと思いますが,裁判員制度がうまく機能するか,半信半疑です。
裁判員制度は他人事ではありません。皆さんも書籍やインターネットで裁判員制度について調べてみてはいかがでしょうか。
しかし大きなネタができました。
それはいよいよ開始の裁判員制度。
来年の候補者向けに通知が発送されたとマスコミで大きく報道されましたね。
私の知人にも一人通知が送られてきた人がいます。
最高裁から書面がきた!と,とても驚いた様子で連絡してきました。
書面を見せてもらったのですが,辞退できる理由が非常に限定しており,しかも曖昧な印象でした。
やりたくない人も相当いるだろうになあ(その知人は絶対に嫌だと言っていました)。
日弁連・熊本県弁護士会としては裁判員制度推進を掲げている以上,なかなか反対するのは難しいのですが,私が弁護士でなく一般の会社員だとして,この通知を受けたら,非常に苦痛だと思います。裁判員の呼出を無視すれば最高で10万円の過料の処分を受けることがあるようですが,10万円払ってでもやりたくないという人は多いでしょうね(なお,「過料」とは行政上のペナルティであって,刑事罰ではないので,前科・前歴にはなりません。もちろん払わなくても逮捕されることもありません。払わない場合に強制執行を受けることはあり得ます)。
もちろん裁判員制度のメリットはあると思いますが,国民の多数が反対している(ようです)制度をごり押しするだけのメリットがあるのか,正直言って疑問です。
裁判員制度の問題点がいろいろと指摘されていますが,その一つに,裁判の行きすぎた迅速化を指摘することができると思います。
これまで,重罪に問われる事件で,しかも否認しているような場合,長期間の審理が行なわれていました。確かに,裁判が長期化すること自体が被告人にとって負担ではあるのですが,死刑を含む重罪を受ける可能性がある事件で,しかも冤罪の可能性がある場合など,いくら慎重に審理してもしすぎることはありません。そこで,弁護人も,検察官の提示する証拠を精査して,弁護側の証拠も大量に提出し,また,裁判の過程で初めて明らかになった事実も念入りに検討して,被告人の主張を論理的な説得として構築し,それを証拠で裏付ける作業を行なってきたのでした。
しかし,裁判員は一般の方ですので,何ヶ月も,あるいは何年も裁判への参加を強制するわけにはいきません。
そこで,裁判の前に,公判前整理手続という事前検討の場を設け,そこで主張と証拠を絞り込んで,短期間に本裁判を行なうという方式を取り入れることにしました。
この公判前整理手続は,裁判員制度への慣らし運転として,重大事件においては既に採用されています。
公判前整理手続によって,確かに裁判の短縮化は図られました。
しかし,どうしても証拠を過剰に絞り込みすぎ,丁寧な審理ができなくなります。
また,審理途中で新たに明らかになった事情を反映させることが非常に難しくなります。
その結果,杜撰な裁判になりかねないのです。
昨日(12月9日),広島高裁は,ペルー人の被告人が小学生を殺害した事件について一審で下された無期懲役の判決を破棄しました。
その理由は,事実関係(犯行場所)の特定が曖昧だというものでしたが,一審の審理が不十分だったのは,公判前整理手続で証拠を限定しすぎたことが大きかったようです。
今回は高裁が判決に疑問を抱き,一審判決を破棄して地裁に差戻し,地裁でもう一度よく審理をするように命じましたが,高裁が必ずこのような判決を行なうとは言えません。
特に,11月11日に最高裁は,控訴審は裁判員によって裁かれた一審判決を尊重すべきであるという報告書を出しており,高裁の裁判官が一審の判決に疑問を抱いてもひっくり返すことが難しくなっています。
本来,憲法と法律にしか拘束されないことが憲法上保障されている裁判官を,ここまで拘束してまで裁判員制度を導入しなければならないのかと,正直言って疑問です。
もちろん,導入される以上は,そのメリットを最大限活かすように弁護技術を磨かねばならないと思いますが,裁判員制度がうまく機能するか,半信半疑です。
裁判員制度は他人事ではありません。皆さんも書籍やインターネットで裁判員制度について調べてみてはいかがでしょうか。